「人と話せるようになりたくて営業を志望しました。」
とにかく人と話せない自分がコンプレックスで仕方なかった。
どうしたら人の輪に入れるようになるのだろう。
どうしたら人と楽しく会話することが出来るのだろう。
幼少期・思春期とずっと人となじめない自分が嫌で嫌で仕方なかった。
笑顔でいれば人と仲良くできる?
中学校を卒業して、高校に入学した。数名が同じ高校に入学したがほとんどが知らない同級生。
日に日に出来上がっていく同級生のグループ。
輪の中に入れなくて呆然。
そして人と話すこと以外にも苦手なことがもう一つ。
人に合わせて行動することがめっぽう苦手でなのである。
当然、移動教室でもどのタイミングで人に話しかけたらいいのかわからなかった。
おまけに次の授業に遅れたくない、でもトイレに行きたい、早弁したい。
いつも急いでいた。
でも一人でいるところを見られると、寂しいやつだと思われるのが嫌だ。
そんなことをずっと思いながら過ごしていた。
人と仲良くなるために、どこかのネット記事で見た笑顔でいれば好かれるというものをまた妄信した。
学校でいるときはずっと笑顔。面白くなくても笑顔。
そうすれば少しだけ同級生と話すことが出来た。遊びにも誘ってもらえた。
でも、遊んだのは1回きりでそれ以降一緒に過ごすことはなかった。
話すことよりも聞くことが大事?
大学生になってからも、人と仲良くなるにはどうしたらいいんだろうと考える日々は続き、
たくさんのボランティア活動に参加しては人と話すというトレーニングをしていた。
「笑顔」で「たくさん話す」ことを常に続けていた。
そんなある日、友人に「自分の話をするより、人の話を聞く方が大事やねんで」と言われた。
え・・・そうなん?!明るくていっぱい話してる人の方が楽しそうやけど・・・!?
でもその日から徹底的に自分の話はせずに人の話を聞き続けた。
「最近どう?」「大丈夫?」「何のバイトしてるん?」
そんなことを続けていくうちに自分の話をすることが出来なくなっていった。
どうやって自分の話ってしてたっけ?
自分から自分の話をすることが怖い。
相手が笑顔じゃないと怖くて仕方がない。
自分の話は人から聞かれてからしか口を開けなくなっていた。
こんなんじゃだめだ!
「「「「もっと頑張ってコミュニケーションの練習をしなきゃ!」」」」
と思い、大学3年生の就職活動で営業職の仕事を探した。
仕事でお客様とコミュニケーションをとること
「人と話せるようになりたくて営業を志望しました。」
それからひたすら人と話す日々が始まった。
案件を紹介していただくために年が何十歳も離れた人との会話をすること。
右も左もわからない自社の商品の説明。
話すたびに自分はダメだと責める日々。
先輩が話す言葉を聞いても頭が真っ白になって何も話せず終わってしまう。
そんな日々を過ごしていくうちに同じ時期に入社した同期は結果を出していく。
毎日比較されて「自分はダメな社員だ」と上司に思われていると憶測で思ってしまい、つらかった。
営業の仕事は「相手の困りごとを聞いて解決するお手伝いをすること」だから必死に相手は何に困っていて(求めていて)、何をすれば笑顔になってもらえるかを考えながら話を聞いた。
でも相手に何を質問すればいいのか、質問が浮かんだとしても一歩相手に踏み込む勇気がなかった。
またお客様に計画提案をするときもどうやって話せばいいんだろうというところばかり気を取られ、お腹が痛くなり・・・(笑)
肝心のお客様のことを知るということが出来なかった。
コミュニケーションじゃない所に問題?
これまでの人生で幾度となく人と話せる方法(コミュニケーション)を模索してきたつもりだが、実際に仕事やプライベートでどうなったかというと、日に日に人が苦手になっていくようになってしまった。
・まずは人の話を聞くこと
・自分の話はしすぎないようにすること
・間違った事は伝えたらいけない
・事前に相手のことを調べる事
・相手に嫌われてはいけない
・礼儀正しく話をしないといけない
色んな「○○でなければならない」が沢山になってしまった。
もうこれはコミュニケーションの問題ではなく自分の心の持ち方が間違っていたのではないか。
こんなに頑張った先がまたつらい未来になるなら、もう人と話せるようになることはもうあきらめよう。
自分が好きなことを話して、自分が聞きたい話題だけ聞けばいい。
「もう人と話せなくてもいいや、自分の不得意よりも得意を伸ばそう」
開き直ってからわかったこと
その後営業の仕事からは離れる事を決断。
実際は不得意と得意すら自分の中でうまく振り分けられていないけれど、今後半年間をかけて自己分析と今後の人生の方向性を決めていく予定である。
そこで今までお世話になったお客様へご報告をさせていただくとこのようなことをおっしゃっていただくことがあった。
■毎回議事録を間違いなく書いてくれるから安心して計画を進める事ができた
■話すスピードがあまり早くなく否定されることがなかったから、なんでも言うことができた
仕事ができなかった自分でも、お客様が少しでも満足していただけていることがあるんだと、目からうろこだった。
流ちょうに話せないこそ、自分は文字を書きまとめることが出来る。
流ちょうに話せないからこそ、人の話をしっかり聞くことが出来る。
これまでお客様に100%の満足を与えられたかというとそうではない。
でも「コミュニケーション」の仕方として口で想いや情報を共有するだけではなく、紙でまとめる事、メールで文章を送ること、自分の姿勢など色々な方法があるなと感じた。
仕事を辞めてから気づいた。
仕事をやめて冷静になってからじゃないとそんなことにも気づけない自分だけど、
自分に対してじっくり考える時間をくれた自分に感謝している。
もちろん一緒に住んでいる「ヌメリ」に対しても。
でも次は「人と話せるようになりたい」とコンプレックスで選んだ仕事ではなくて、自分の得意を伸ばせる仕事をしよう。